北アルプスの笠ヶ岳に1泊2日の山小屋泊で登ってきました。
ルートは急登と言われている笠新道。これがもうかなり過酷で片道8時間近くもかかる長丁場。笠ヶ岳山荘に着いた時にはもうヘトヘトでした。
天気も1日目はガスが多めで展望もあまり望めなかったですが、杓子平から見た雄大なカール風景と夕食後に見た夕焼けの空が素晴らしかったです。
因縁の笠ヶ岳……。
あれは忘れもしない12年前の夏。まだアルプスなんて数えるほどしか登っていない中、テント装備を買いそろえてウキウキしながら挑んだのが双六岳~笠ヶ岳の縦走コースでした。
1日目は新穂高温泉から双六小屋まで。思いのほか早く着いたものだから、双六岳に加えて三俣蓮華岳まで首を突っ込んだわんぱく登山。それが仇となったのか、2日目に膝を痛めて笠ヶ岳の稜線で危うく遭難しかけたのは苦い思い出。調子に乗った自分に活を入れてくれたのが笠ヶ岳でした。
何とか登頂こそ果たしたものの、泣きながら撤退するように無様な姿で下ったのが笠新道。今回はそこを登ります。
スタートは新穂高温泉。
今回も毎日アルペン号を利用したのですが、山小屋とのセットプランというのがあったのでそれを初めて使ってみました。1000円くらいお得で、しかも山小屋(笠ヶ岳山荘)へ電話を入れずにWebで予約が完結するのが良かったです。
トイレも済ませて、朝の6時30分に登山開始。
新穂高からは左俣林道を1時間ほど歩いていきます。
ここは春先の雪崩(土砂崩れ)で通行止めになっていたのですが、爆速復旧で7月初旬から無事に通れるようになってました。有難いことです。
道はほとんど平坦なので、ここら辺は良い足慣らし。
単調な道を歩き続けて、こちらの標識があるところが笠新道の入り口になります。
双六岳に向かう場合は林道をさらに30分ほど進めば登山口。途中にはテント泊も可能なわさび平小屋もあります。
笠新道登山口には水場あり。今年は雨が全然降らずに、事前の情報では枯れている可能性もあると聞いてましたが、ドバドバと冷たい水が流れていました。
笠新道に挑む場合、この先一切水の補給ができないのでここでしっかり汲んでおきましょう。自分は2.5L持って登ることにしたのですが、山荘に着くころにはギリギリでした。
いや、本当にきつかった……。
水分補給を十分して、いざ登山開始。
出だしから登り坂ですが、序盤はまだ急登とまではいかないつづら折りの道。
ここら辺はまだ余裕です。
笠新道は無駄なアップダウンが一切なく、基本的にずっと登りが続く体力と気力勝負なコース。
展望も序盤は全くなくて、唯一の目印となるのがこの標高が記された標識です。
入口が標高1400m弱なので、すでに300mほど登った地点になります。まだ大丈夫。
進んで行くと足元に岩が増えてきます。
これが笠新道の厄介なポイントの1つで、この岩があるために歩幅が乱される。下りも下りで滑らないように注意しなきゃいけないのでスイスイ下れない。
12年前はここを足を痛めながら半泣きで下ったわけですが、道中の景色なんて全く覚えていない中で、この岩に苦しめられたのだけは鮮烈に覚えています。
途中には真新しい倒木もありました。
これは1週間ほど前の大雨で倒れたもので、下山してくる方にも途中に倒木あるから気を付けてと教えていただきました。
通過する分には問題なかったですが、こういう細かい障壁のジャブが結構効いてくる。
単調な道を登り続けること2時間。少しずつ景色が開けてきました。
山頂はまだまだ先ですが、あいにく雲がかかって先の状況が見えない。
ただこれが逆に良かったのかもしれないです。日差しがない中でこれだけ汗だくだったんだから、カンカン照りならどうなっていたことか……。
1日目はガスが多めでしたが、それでもたまに展望が覗いてくれて背後には穂高連峰の刺々しい岩稜が見えました。
尖っとるな~
その後もひたすら登りが続く道。
上に行くにつれて岩も大きくなってきて部分的にハシゴも設置されていたりします。
これだけ見ればなんてことない道ですが、ここまででだいぶ疲れてます。高低差もまだ1000m程度なのに、急登続きで精神的に参ってくる。さすが過酷と言われる笠新道。
12年前に大きなしっぺ返しを受けた笠ヶ岳。今回は前回のような無様な姿は見せずにいかにスマートに登るかがテーマです。
自分の中ではリベンジ戦とも言えるわけですが、普通リベンジするなら同じ道をたどるのがセオリーなんでしょうがそこは完全無視。前回はテント一式を背負った重装備も今回は山小屋泊。課金して軽量化実現よ。
コースも今回は双六岳はスキップして笠ヶ岳との一騎打ち。前回よりも荷物軽い&距離短いのイージーモード。これで満身創痍になるんだったら、自分にはもう笠ヶ岳は無理です。今日でお別れします。
そんな小賢しい戦略を立てての12年越しの笠ヶ岳。
前回は下山で使った笠新道を頑張って登ってやろうというのだけが唯一の大義名分です。
こうして登ること3時間。
笠新道の最大の見どころポイントともいえる場所に到着。
それがこちらの杓子平。標高約2500m地点に広がる雄大なカール地形を望める場所です。
到着時にガスっていたものの、休憩している間に一時青空が広がって山の稜線が見えました。
そして短い時間ではあったものの、笠ヶ岳の山頂もチラ見え。
肉眼ではその肩にある笠ヶ岳山荘も見ることができます。
肉体的な疲労はかなりのものですが、ゴールが見えただけで精神的にはだいぶ楽になる。
杓子平からは完全な高山帯になって、辺り一面にはチングルマの群生が広がっていました。
8月中旬のお盆明けともなければ花はもう残っておらず、すべてが穂の姿に。
夏の終わりを感じて少し寂しい気持ちにもなります。
一休みして登山再開。
ここから稜線まではまたひと登りあるので頑張ります。
目の前に広がるアルプスらしい雄大なカールが美しい。何となく木曽駒ヶ岳の千畳敷カールに似た雰囲気を感じます。
ここが稜線までの最後の急登ポイント。
目の前の岩場を右側から回り込むように進んで行きます。先ほど、笠ヶ岳の山頂が見えたものの、まだここから2時間くらいはかかる距離。
近いようで遠い摩訶不思議な北アルプス・笠ヶ岳。12年経ってもやっぱり強敵ですわ。
ここら辺は少し登っては休んでの繰り返し。なぜかわからないですが、この笠新道は力が吸い取られるように疲れていきます。
それでも振り返れば美しい景色で、序盤の急登とはかけ離れた穏やかな空間が広がっています。
この杓子平も12年前は下りるのに必死であまり記憶にないところ。
前回のブログを読み返してみたら、この辺りでライチョウと出会ってました。こういうとき、ブログとして記録に残しておいてよかったと思えます。
その雷鳥様について、今回はこの先の稜線でご登場いただくことになりました。
こうして12時過ぎにようやく笠新道を登り切り、稜線分岐に到着。
笠ヶ岳はガスって見えなくなってしまいましたが、これから歩く稜線はしっかりと捉えました。
ここから先も一部登りはありますが、これまでの道に比べたら楽なもんです。
その前に、まずは少しだけ反対側へと進んで抜戸岳に登頂。
笠新道の分岐から10分程度で来れる距離です。ここは前回スルーしたところなので、今回是非とも立ち寄っておきたかったところ。
何も見えやしませんでしたが、登頂記念に標識だけ納めておきます。
あとはひたすら笠ヶ岳目指して稜線を直進。
ガスも濃くなってきましたが、涼しくて歩く分にはちょうどいい。
そんな中で聞こえてきたのが、「ウポッ!ウポッ!」というあの重量感のある鳴き声。
声がした方を見ると、すぐ近くでライチョウが顔を出していました。
やぁ!という感じでまるで向こうから声かけてくれた感じ。例によってふくよかなお腹が可愛いですが、割とこの子はスタイリッシュな方だと思います。
先月の白馬岳で見たライチョウは見事なまでのわがままボディーだったなぁ。
ここら辺の稜線は平坦で非常に歩きやすいところです。
晴れていれば展望も最高で、その至福の稜線歩きは2日目に実現しました。
時折ガスが晴れると、先ほどまでいた杓子平を一望。
上から見ると広々としたカール地形がまた壮観な眺めです。
さらに進むと有名な抜戸岩に到着。
稜線の途中に構える岩の門で、ここの間を通って行きます。笠ヶ岳登山者を出迎える入場ゲートという感じ。
そしてついに笠ヶ岳山荘のキャンプ場に到着。
ここのテント場は山荘から少し下ったところにあって、ここから山荘までは5分ほどの登りです。
一応テント場にも水場はあるのですが、今年は少雨というのもあってすでに枯れていました。
岩に書かれた声援を受けてあと一息頑張ります。これはよく覚えていて、12年前にも確かにありました。懐かしい笠ヶ岳の記憶が蘇ります。
しかしすでにテントがいくつも張られてましたが、ここまでテントを担いで登ってくるとは本当に凄いわ。みんな膝は大丈夫かね。
こうして14時に笠ヶ岳山荘に到着。
登りだけで8時間近くかかりました。距離はそこまで長くはないはずなのに、高低差が半端ないからか。いつも以上に水分も消費して何とか無事にたどり着けました。
こちらが受付。
2025年の夏は異例の少雨で山小屋の水不足が問題となってますが、ここ笠ヶ岳山荘も例外ではなく宿泊者でも水は有料(500ml/200円)となっており、洗面所の水道も出ない状態になってました。
ペットボトル飲料は制限なく買えるということだったので、到着早々ポカリを2本購入。1本はその場でがぶ飲みよ。
宿泊手続きを済ませて中へ。初めて泊まる山小屋ですが、清潔感にあふれていてとても綺麗でした。
登山とは全然関係ないですが、受付用紙を書いていて思ったのが、最近恐ろしいまでに漢字が書けなくなっているな~と。特に予定コースを書くところとか。読めるのに書けない。字も下手になっている。困ったもんです。。。
泊まったのはこちらの2段式の大部屋。
12人部屋でしたが、この日は割と空いていて5人で使うことができました。
夕食の時間は16時20分。
1時間以上時間があったのと、少しだけ青空が戻ってきたので1日目に山頂まで登ってしまうことにしました。
小屋の目の前に山頂はありますが、多少登るので10分くらいはかかります。
こうして12年ぶりの笠ヶ岳に登頂。
展望は残念ながらほとんど望めませんでしたが、頭上は晴れて明るい日差しが届く山頂でした。
北アルプスの中ではやや外れたところある笠ヶ岳。登りの過酷さも相まってもしかしたら今後登りに来ることはないかもしれないので、この山頂標識はしっかりと目に焼き付けておきます。
夕方に近づくにつれて天気も回復傾向で、少しずつ青空が広がり始めた時間帯。
山頂でたたずんでいても暖かかったので、しばらくボーっとして過ごしてました。
山頂脇の祠でお参り。
明日は晴れますようにと。
小屋に戻って待望の夕食の時間。
メニューはハンバーグカレーでした。舌がお子様なので、変にこだわった食事よりもこういう方が好き。しかもカレーはおかわり自由!たらふく頂いて美味しゅうございました。
ちなみに毎日アルペン号のセット割引が2食付きのプランだったので、朝食は自由に出発できるように弁当にしてもらいました。
弁当は酢飯の混ぜご飯とおかず。この時期のご来光が5時過ぎで朝食も5時からだったので、翌朝は4時半に自炊場で弁当を食べて、小屋前でご来光を眺めての出発となりました。
夕日の時刻までしばらくあるので、夕食後は自室に戻って他のハイカーさんと雑談タイム。
笠ヶ岳山荘の嬉しいところが部屋にコンセントが用意されていて自由に充電して良いところ。
スマホのバッテリー残量って登山中に地味に気になるところなので、これは非常に有難かったです。
そうして18時半、小屋の外に出て見ると夕日を感じられるくらいに雲が取れてきてくれました。
予期せぬハート形のメルヘンな夕日。映えるじゃないか。
稜線の雲もだいぶ取れて、明日歩く至福の縦走路が姿を現してくれました。
何ともそそられる稜線。
実際、2日目の朝は素晴らしき稜線ハイクを堪能できました。
夕日とは反対の東側では、雲の合間から穂高連峰の岩山もお目見え。
あれは奥穂高岳かな?普段は長野側(東側)から穂高岳~槍ヶ岳を眺めることが多いので、西側からの眺めは少し不思議な感じがしました。
そして夕日が沈む時刻。
薄っすらとガスが漂うものの、陽が沈む情景はしっかり目にすることができて良かったです。
ほんのりと赤く染まる笠ヶ岳。
笠ヶ岳山荘の立地条件はかなり良くて、山頂に行かずとも小屋前から夕日と朝日を眺めることができます。
翌朝も笠ヶ岳山頂でご来光を迎えようかと考えてはみましたが、結局面倒になって小屋前から拝むことになりました。
雲が完全に引いたのは太陽が雲海の果てに沈んだ直後。
美しいまでの夕焼けがこの日の最大のご褒美となりました。
わかりづらいですが左奥の山影は白山です。
この時ばかりは山荘に泊まっている人がみんな出てきて、思い思いの場所で夕焼けの空を眺めてました。
こうして1日目が終了。
大変でしたが、無事に笠新道を登り切れて良かったです。色々と思うところがあった笠ヶ岳も、自分の中で気持ちを一区切りつけれた気がします。
登頂は果たしましたが、登山として面白かったのは2日目。そこには素晴らしきアルプスの絶景が待っていました。
2日目に続く……
【日程】
2025年8月17日
【コースタイム】
6:30 新穂高温泉
7:20 笠新道登山口
10:40 杓子平
12:20 抜戸岳
14:00 笠ヶ岳山荘
14:30 笠ヶ岳
北アルプスの白馬岳~唐松岳を1泊2日で縦走登山してきました。
メインは日本三大キレットの1つである不帰キレット。岩場オンチながら頑張ってきました。
杓子岳で見たご来光や白馬鑓ヶ岳~天狗山荘にかけての雄大な稜線風景、夏の高山植物のお花畑など、変化に富んだコースでとても面白かったです。
八方に下山後は温泉に入って高速バスで東京へと帰りました。
栂池高原をスタートして白馬乗鞍岳、小蓮華山に登って白馬山荘までたどり着いたのが1日目。
結構疲れていたのか、消灯の20時を待たずに爆睡して早朝3時ごろに起床。
まだ大部屋のほとんどの方が寝入ってる中で、静かに部屋を退出して山荘入口で出発の準備を整えました。
早朝3時半に白馬山荘をスタート。まだ真っ暗で、ヘッドライトを付けての登山も久しぶり。
この時期のご来光は4時40分くらいで、白馬山荘から1時間ほど先にある杓子岳山頂で日の出を拝む算段で行ってきます。
真っ暗な稜線を杓子岳方面に進んで行く。前後を歩いている人が他にもいたのでそんなに心細くもなく、4時過ぎには空も白み始めてきました。
杓子岳は昔一度登ったことがあるのですが道中の記憶が全くなくて、意外とアップダウンあったんですね。特に山頂までの急登がきつかったです。
4時40分に杓子岳に登頂。
意外と時間がかかってご来光に間に合わないんじゃないかと思いましたが、ギリギリ滑りこめました。
山頂に着いた途端に雲が湧いてきて一時はどうなるかと思ったものの、瞬間的に雲が引いてくれて東の空から待望のご来光!
久しぶりに山から見る朝日、雲海も広がって素晴らしい景色でした。
ただ喜んだのも束の間、すぐに山頂が雲に包まれてガスってしまったのでそそくさと下山して白馬鑓ヶ岳を目指します。今日の行程はまだまだ長い。
杓子岳から一度大きく下ってからの登り返し。
この時間はちょうど山頂部にだけ薄い雲がかかる感じで、空の色彩の変化が幻想的でした。
写真は振り返って見る杓子岳。
山頂目指して登っていると再びガスが流れてくれて白馬鑓ヶ岳の全容がお目見え。
鑓ヶ岳という名前に反して、こちらから見る分には穏やかで丸い山容をしています。
アルプスらしい稜線が気持ち良い。
こうして実に13年ぶりに白馬鑓ヶ岳に登頂。山頂には先客が数名ほど。
すっかりガスが取れて、ここからの景色がそれはもう素晴らしかったです。
こちらはこれから歩く南側の展望。
この先、今回の縦走ルートの核心部である不帰キレットが待ち構えていますが、そこまではもうしばらく緩やかな稜線が続きます。一目でわかる、自分好みの稜線だなと。
右奥に見えているのは立山~剱岳。さらに中央はるか奥には槍ヶ岳も見えて、アルプス全域が綺麗に見渡せました。
歩いてきた白馬三山の縦走路も圧巻の光景!
北側を見れば中央奥に白馬岳、右手前に杓子岳が綺麗に見えました。ここから見ると白馬岳と杓子岳の形ってよく似てますね。
しばらく休憩してから縦走路を引き続き南下していきます。ここから先は人生で初めて歩く区間。
晴れたとは言いつつも、まだ時たま雲が湧いてきて稜線を流れるように覆うさまは神々しい景色。
夏山らしい、とても夏山らしいぞ。
ここら辺の登山道で特筆すべきはコマクサの群生。
そこら中に高山植物の女王が咲き乱れていて、その規模は白馬大池あたりを軽く超えていると思いました。
コマクサを見たければ白馬鑓ヶ岳もおすすめです。
振り返って見る白馬鑓ヶ岳。
この辺りは人も全然歩いていなくて静かな雰囲気がとても良かったです。まだ朝の6時なので気温も涼しくて歩きやすい。
途中、白馬鑓温泉の分岐も過ぎて稜線を直進。
ここら辺は道が穏やかで最高に気持ち良く歩けます。キレットに挑みに来ておいて何ですが、岩場なんかよりもこういうユルフワな道が大好きなんです。
お花畑も随所に広がっていて、白馬界隈はやっぱり高山植物が豊富だなと。
チングルマは花よりも穂の姿が多かったです。
朝の6時30分に天狗山荘に到着。
綺麗で立派な山小屋で、脇にはテント場も用意されています。
時間的にみんな出払った後なのか、誰もいなくてひっそりとしてました。
山荘の脇にあるのが天狗池。
そのすぐ横には水場もあってキンキンに冷えた水が美味しかったです。この先、唐松岳頂上山荘までは水が補給できるポイントもないので必要な分はここで汲んでおきましょう。
しばし休憩。標識にはついに不帰ノ嶮(かえらずのけん)の文字が出てきました。
核心部が近づいてきてますが、まだしばらくは穏やかな稜線区間が続くので、ヘルメット装着はもう少し先でも大丈夫です。
不帰キレット目指して、さらに稜線を南下。
引き続き緩やかで雄大な道がもう最高でした。なんで今まで歩かなかったんだろうというくらい、自分好みの稜線。
右奥のこんもりした山(天狗の頭)にまずは登ります。
山荘から20分ほどで天狗の頭に到着。
ここも周囲の視界が開けて眺めが最高の場所です。
左奥に見えているのは五竜岳と鹿島槍ヶ岳、右に見えている三角形の山は剱岳。
特にこの先は立山連峰と並走するように進んで行くので、晴れていれば常に右手に剱岳が見渡せます。
こちらは歩いてきた方面。中央に見えるのが白馬鑓ヶ岳。
今回の登山でとても好きになったのがあの白馬鑓ヶ岳。山頂までの稜線を含めたら白馬岳よりも好きかもしれない。
白馬鑓ヶ岳の魅力に気づけただけでも、今回登りに来て良かったと思えます。
不帰キレットがいよいよ近づいてきました。ユルフワな稜線とももうすぐお別れ。
正面には不帰キレットのゴールである唐松岳が見えているのですが、それ以上にその奥の鹿島槍ヶ岳の存在感が強烈です。
こんな感じで山の西側のトラバース路を進んでいき、写真3つ目の山の先が不帰キレットの入り口になります。
緊張してきたぜ。
そしてこちらが不帰キレットの入り口。
厳密にいえばこのルートの核心部はまだ先ですが、白馬岳から唐松岳へと南下する場合、この出だしの急な下り坂が結構厄介。
この急坂が天狗の大下り。
急なガレ場が続く下り道で、自分みたいなへっぴり腰には落石発生させないように非常に神経使うところ。ヘルメット必須ポイントです。
実際、白馬岳から唐松岳へと向かう場合、核心部の不帰の嶮が登りになるため難易度はそこまででもなく、序盤のこの大下りが最も危険とさえ言われているところ。
有名なのがこの垂直に垂れ下がった鎖場。
長めの鎖場が2本続くところで、上から見るとなかなかの高度感。
足場はしっかりしているので、三点確保を意識しながら下りましょう。ビビりな自分は時たま必殺の四点確保を繰り出してやります。(う、動けない……)
鎖場が終わってもまだまだ下る。
高低差300mほどを一気に急下降する、まさに大下り。
ただこの下りがあるからこそ、その先は登りメインになってくれるので岩場通過の難易度が下がるのが南下ルート。
鞍部に近づくにつれて、見上げるように立ちはだかる不帰の嶮。
威圧感が半端ないです。
あんな岩のお城を自分なんかが登れるのかと不安にもなりますが、ここまで来たら逃げ場もないので行くしかない。
振り返って見る大下りがまた凄い斜度。
これを登るのも辛いとは思いますが、細かい技術を持ち合わせていない私にとってはひたすら体力勝負の脳筋コースの方がまだマシ。
何年登山をやっても岩場の下りは一向に慣れません……
いよいよ不帰キレットに突入。
まず目の前にあるのが1峰。尖がり具合がえげつないですが、右の斜面を巻くように登って行くのでそこまで難しくもありません。
不帰1峰に到着。
目の前に立ちはだかるのが2峰。双耳峰になっていて、左が北峰、右が南峰。
不帰キレット最大の難所と言われるのが、あの2峰北峰までの登りになります。
まずは2峰に取り付くために1峰からいったん下る。
岩稜帯ではありがちな、登っては下っての繰り返し。
後日ひどい筋肉痛に苛まれたのも、こういった下りで下手に力んだからだと思います。
鞍部に到着して見上げる2峰。槍ヶ岳以上に尖がってるじゃないかっ!
あのとんがり目指していよいよ核心部の岩場に突撃。
近づいてわかる、ごっつい岩場のプレッシャー。
どこをどう登ればいいのか、パッと見ではわからないですが、その場に立てばルートを示すマーカーが随所に用意されているので迷う心配はそこまでありません。
鎖場やハシゴが連続する岩の迷宮。
登りというのもあって決して難しくはないですが、なんせ岩場が続くので緊張感が抜けない。
傍らに見える岩の1つ1つが尖がってやがる。
さらに右奥に見えるのは岩の殿堂、剱岳。岩山のボス的存在が常に見守っていてくれますが、ビビりな自分にとっては剱岳から監視されている気分。
「そんなへっぴり腰で登りきれんのかよ」と。
山頂が近づくにつれて鎖場も急になってきます。
幸いだったのがこの時間にすれ違う人も後ろに続く人もおらず、自分のペースで登れたこと。
渋滞云々とかではなく、こういう岩場は人に見られているだけで緊張が数倍増し。無様な姿はさらしたくないのよ。
見ないでもいいのに怖いもの見たさで登ってきた鎖場を見下ろしてしまう。
そして自覚する。ここを下山するのは自分には無理だなと。
不帰キレットは南下するか北上するかによって難易度が大きく変わると言われていますが、それを身をもって体感しました。
自分みたく岩場苦手の人は、白馬岳から唐松岳へと目指す方が断然良いと思います。
こうして核心部を乗り越えて不帰2峰北峰に到着。
ポンコツながら頑張りました。まだ唐松岳は先ですが、山頂は一息付けるほどの広さがあるのでここで小休憩。
すぐ目の前に見えているのは2峰南峰。
この区間は大した難所もなく歩くことができます。
不帰2峰南峰に到着。
暑さのせいか緊張のせいか、水分消費量が半端なくて天狗山荘で汲んだ水が残りわずかになってきました。
2峰から先も岩稜帯が続きますが、ここら辺は特に難しいところもなく見慣れた北アルプスの稜線という感じ。
奥に見える尖った峰が3峰だと思いますが、あちらは登頂せずともトラバース路でスルーできます。
花崗岩が立ち並ぶ白き稜線。
ここら辺は非常に気持ち良く歩けた区間で、いつの間にか不帰キレットも終わりを迎えて唐松岳が間近に迫っていました。
こうして10時15分に唐松岳に登頂。人生初の不帰キレット、無事に踏破。
山頂はあいにくガスっていましたが、北アルプスの中でも登りやすいとされる唐松岳。ここに来て一気に登山客が増えました。
不帰キレットから登ってきたことをアピールすべく、ヘルメットをしばし脱がずにやり切った感を出していたのはここだけの話。誰一人見向きもしませんでしたがね……
白馬岳は見えなかったものの、歩いてきた稜線の一部が顔を出してくれました。
怖い箇所もありましたが不帰キレットを無事に乗り越えて、これでようやく白馬岳~唐松岳~五竜岳~鹿島槍ヶ岳が繋がりました。
歩いた軌跡を繋ぐというのも、登山の面白さの1つよ。
山頂から10分ほどのところにあるのが唐松岳頂上山荘。
水が切れかかっていたのでここで飲料水を購入して一息つきました。
ここからは何度も歩いたことのある八方尾根を下山。
時刻もまだ昼前とあって、登山客がどんどん押し寄せて賑わってました。
途中は省略して、八方尾根の最大の見どころと言えばこの八方池。
あいにく雲が多かったですが、白馬岳の山肌は見せてくれて、池に映るモクモクした雲の絵も夏らしい景色でした。
晴れていればこんな感じの美しいシンメトリーな景色を見せてくれる八方池。ここも北アルプスの中ではお勧めの場所です。
(2018年7月20日~21日 唐松岳~五竜岳テント泊登山より)
八方尾根のもう1つの名物と言えばこちらのケルン。
もの言いたげなこの顔が憎めない。
山はガスって来たものの、下界は晴れ渡って麓の白馬の街並みを一望できました。
この天空の木道路は何度歩いても気持ち良いです。
こうして八方池山荘のリフト乗り場まで下山完了。
時刻は12時過ぎでしたが、唐松岳頂上山荘に宿泊する人たちなのか、これから登る準備をしている人も多くて賑わっていました。
ここからはスキー場のリフト2本とゴンドラという文明の利器を駆使して一気に下山。
涼しい風を受けながら飲み干すポカリは最高に旨かったぞ。
下界に降り立って向かったのは八方の湯。バスターミナルのすぐ近くにある日帰り温泉で、公共交通利用にとっては非常に有難い存在です。
平日というものあってそこまで混雑はしてませんでした。
日帰り温泉も楽しんで、白馬八方バスターミナルからバスタ新宿行きの高速バスに乗って東京へと帰りましたとさ。
1泊2日の白馬三山~唐松岳縦走が無事に完了。
日本三大キレットの1つ、不帰キレット。
実際に歩いてみた限りではそこまで難しい箇所もなくて、自分にとってはちょうど良い難易度の岩場という感じでした。
個人的にはキレットよりも天狗山荘あたりの雄大な稜線が最高に気に入ったので、ここはぜひまた歩いてみたいと思います。
楽しい夏の北アルプス登山でした。
【日程】
2025年7月31日
【コースタイム】
3:30 白馬山荘
4:40 杓子岳
5:40 白馬鑓ヶ岳
6:30 天狗山荘
7:00 天狗の頭
8:30 不帰1峰
9:20 不帰2峰北峰
9:35 不帰2峰南峰
10:15 唐松岳
12:00 八方池
12:35 八方池山荘