北アルプスの笠ヶ岳~弓折岳へ山小屋泊の1泊2日で縦走登山してきました。
新穂高温泉から笠新道をで笠ヶ岳山荘まで登ったのが1日目。2日目はご来光を見てから弓折岳までの稜線を歩いて鏡平山荘を経由して小池新道で下山。
天気も良くて槍ヶ岳や穂高連峰、薬師岳や黒部五郎岳など北アルプスの名峰を一望できて素晴らしい夏山登山でした。鏡平の名物・クリームソーダも美味しかったです。
夏の北アルプス・笠ヶ岳縦走登山2日目。
新穂高温泉から過酷と言われる笠新道を登って、どうにかたどり着いた笠ヶ岳山荘。夕食のカレーが美味しくて部屋も快適で19時には爆睡。普段の下界生活よりも睡眠がバッチリとれた1日目でした。
2日目はご来光を見るべく、4時に起床して自炊場で朝食の弁当を食べてから出発。
朝の5時、山荘を出ると綺麗な朝焼けの空が広がってました。目の前に見えるのは槍ヶ岳~穂高連峰のやまなみ。
もう間もなくご来光という時刻で、槍ヶ岳のちょうど裏側から太陽が出そうな感じでした。
こちらは反対の西側の展望。
正面奥に見えているのが白山。雲海も敷かれて、こちらもこちらで夜明けの淡い空の色がとても綺麗です。
そして5時20分、槍ヶ岳の肩から待望のご来光!
槍ヶ岳と大喰岳の間、ちょうど飛騨乗越から太陽が顔を出してくれました。
槍ヶ岳のシルエットと合わせて素晴らしき景色!
もう2週間ほど早く来れば、ちょうど槍ヶ岳の角から陽が昇るダイヤモンド槍が見れるようです。
くびれた鞍部から光が差すというのも、これはこれで十分綺麗。
1日お世話になった笠ヶ岳山荘。
最初は奥に見えている笠ヶ岳の山頂で日の出を迎えようかと思ってましたが、小屋前からでも綺麗に見えそうだったので結局登りませんでした。
実際、笠ヶ岳山荘からであればご来光も夕日も綺麗に見える絶好のロケーションでございます。
朝日を浴びながらこの日の縦走を開始。
まずは昨日歩いてきた笠新道分岐まで稜線を戻ります。少し下ったところにあるテント場にも朝日が届き始めてました。
サヨナラ、笠ヶ岳。
北アルプスの外れに位置しているので、他の山となかなかセットで登りづらい笠ヶ岳。次に登りに来ることがあるかわからないので、これから見る景色は特に目に焼き付けておこうと思います。
キャンプ場から振り返って見る笠ヶ岳と笠ヶ岳山荘。
自分の中では因縁のあった笠ヶ岳だったので、これで気持ちを一区切りできた気がします。
12年前の無様な姿は晒さないように、2日目も気を引き締めて頑張ります。
笠ヶ岳から南側を見ると、焼岳、乗鞍岳、御嶽山が綺麗に並んでいました。
1日目はガスっていたので昨日は見れなかった景色。
周りの山が大きいので、ここから見ると焼岳が意外とちっこく見えます。
昨日は真っ白だった稜線を歩いていく。
ここら辺は多少のアップダウンはありますが、傾斜も緩やかで非常に歩きやすい道が続きます。
何度も後ろを振り返っては笠ヶ岳の姿を確認してしまう。
まだ出発して10分程度ですが、こうして見ると笠ヶ岳山頂までまだまだ登らされる感が強い。この現実から目をそらす意味では、1日目はガスっていて良かったのかもしれない、と前日の曇天を肯定的に捉えました。
途中にある抜戸岩を通過。
登山者が必ず通ることになる笠ヶ岳の入場ゲート。次にここを通ることは果たしてあるだろうか……。
その後も穏やかな稜線をのんびり歩いていきます。
まだ時刻は朝の6時過ぎ。暑くもなく寒くもなく、1日で一番快適に歩ける時間帯。
夏山はどうしても昼あたりから天気が崩れるので、朝のこの時間が勝負。この時間に登山コースのハイライトを持ってきたいところ。
足元にはそこら中にチングルマが咲いていました。
煌びやかな穂の群生が美しかったです。
しばらく進んで、こちらの目の前の坂を登り切ったあたりが笠新道分岐。
ここで道が二手に分かれます。
笠新道を下る場合は右へ進んで岩稜帯を下った先にある杓子平を目指します。
稜線からも見えている、眼下に広がる雄大なカール地形がそれ。
バックには荒々しい岩峰の穂高連峰。
特筆すべきか笠新道分岐からの笠ヶ岳。
ここから見る笠ヶ岳がまさに名前の通り綺麗な三角形をしていてカッコいい!
今回の登山はまさにこの姿を見たくて登りに来たようなもの。前日は不発に終わりましたが、無事にその雄姿を拝められて良かったです。
下山は笠新道ではなく鏡平経由で新穂高温泉に下るため、分岐を直進します。
ここから先は1日目に歩かなかった区間。
そして12年前に膝が痛い痛い言いながら歩いたところ……。
引き続き、フラットで美しい稜線が続く道。
前回は歩くのに必死でここら辺の記憶が全くないので、今回はじっくり堪能します。
少しずつ裏銀座に近づいてきて、正面には北アルプス中枢の名峰たちが見えてきました。左端が黒部五郎岳、その奥が薬師岳。
大キレットと並走するように進んで行くので、右手には常に槍ヶ岳~穂高岳も見えています。
朝のこの時間は逆光なので、黒い壁のように立ちはだかっておるわ。
ここまで歩いてきた天空の稜線。
ご覧のように全体的にアップダウンが少なくて非常に歩きやすい区間です。その道の終点に聳える笠ヶ岳の存在感がまた凄まじい!
やっぱり笠ヶ岳は少し離れてみる姿が好きだなぁ。
ある程度稜線を進むと、秩父平への下りが待っています。
ここを下ってしまうと、もう笠ヶ岳を眺めることができなくなってしまうので、この手前でしっかり見納めしておきましょう。
ガレ場の下りはやや滑りやすいので慎重に。
こちらが秩父平。
笠ヶ岳~双六岳の縦走路の途中にある平原のような場所で、目の前には槍ヶ岳と大キレットを望める絶景ポイントになっています。
何とも穏やかな景色ですが、まさにこの場所こそ、12年前に膝を痛めた苦い思い出の地。
ここからだと進むにしろ戻るにしろ、大きな登りが待ち構えていて逃げ場がないのがヤバかった。結局、笠ヶ岳まで突き進んだわけですが、その判断が正しかったのかはいまでもわからない。
因縁の笠ヶ岳、因縁の秩父平。
苦い思い出がよみがえりますが、平常な状態で訪れればなんとも素晴らしい場所で、周囲を取り囲む荒々しい岩壁は迫力満点です。
高層湿原のように開けたポイントになっているので休憩するにも最適。
雄大なカール地形は1日目に歩いた杓子平にも近い雰囲気があります。
写真奥の稜線から降りてきたわけですが、逆ルートで進む場合はこの登りが結構つらいところなので頑張りましょう。
今回は雪が全くなかったですが、7月あたりだとまだカールの登りに残雪があってロープが垂らされた急登ルートになっている可能性もあります。前回がまさにそうで、雪の上をガツガツ登った記憶があります。
秩父平から先は何度かの登り返し。
まず正面に見えるのが大ノマ岳。こちらからアプローチすると目立った山に見えないですが、この先の弓折岳あたりから振り返って見るとなかなかの存在感を放っている山です。
先ほどまで歩いていた稜線を振り返る。
ここまで来ると、もう笠ヶ岳は見えなくなってしまいます。
大ノマ岳から先の稜線風景。写真ではわかりづらいですが、左奥には双六小屋も見えています。
ここから再び下り坂になるわけですが、今日の行程で一番アップダウンが激しいのがこの区間。
鞍部までガッツリ下って行きます。
標高300mくらいを一気に下って大ノマ乗越に到着。
ここからの登りがまぁきつかった。朝の涼しさはどこへやら、気温もぐんぐん上がって照り付ける日差しが強烈でした。
一度、標高2400m弱まで下がるので、ここら辺だけが一部樹林帯。
急な登りにはハシゴが設置されていたりもします。危険個所はないですが、道幅が狭いのですれ違う際はお気を付けください。
風も遮られ、ムワァ~っとした暖かい空気がサウナみたいでしたよ。
急登を登り切ると、再び展望の良い稜線風景に。
ここら辺は平地で広々とした空間。なんとも平和な雰囲気に包まれています。
そして振り返って見る大ノマ岳がこんな感じ。登山者を返り討ちにする気満々という急登で待ち構えています。
あの急坂を下ってきたわけですが、逆ルートで行く場合はあの大ノマ岳に登らなきゃいけないので、かなり疲れるところ。頑張りましょう。
こちらが弓折岳。
登山道から少し外れていますが、山頂は分岐からすぐのところにあります。
標高2592m、花の百名山にも選定されている山です。
弓折岳の正面には槍ヶ岳の展望。
スタートの笠ヶ岳山荘ではだいぶ北側に見えていた槍ヶ岳も、稜線をひたすら北上してきたことでちょうど並ぶ位置まで来ました。
弓折岳から少し進むと弓折乗越に到着。
鏡平~小池新道コースとの分岐点で、ここまで来ると人も一段と増えてきます。
弓折乗越からの槍ヶ岳~大キレット~穂高岳の展望も素晴らしい。ここから見ると、大キレットのくびれ具合が半端ないですね。
ベンチもあるので、ここも休憩ポイントには最適の場所です。
今回の縦走登山はここまで。双六岳はスキップして、弓折乗越から鏡平へと下山していきます。
もう無茶はしない。安全第一、いのちだいじに。
至福の稜線歩きは終わってしまいますが、この先にもまだ1つの絶景ポイントが待っています。
30分ほど下って鏡平山荘に到着。
池のほとりに建てられたオアシスのような雰囲気が最高です。
そしてこの鏡平山荘で有名なのが鏡池から見る槍ヶ岳~穂高連峰。
池に映る逆さ槍と逆さ穂高、そして夏のブルーな空が絶景!
2日目はこの鏡池に来るまで何とか晴れていてほしいと思ってましたが、無事に青空の下で見れて満足です。
鏡平山荘のテラスでしばし休憩。夏はかき氷やクリームソーダが名物ですが、知覚過敏の自分はかき氷が苦手なのでクリームソーダをチョイス。
炎天下で食べるクリームソーダは最高に美味かったぞ。追加でCCレモン500mlも流し込んで、お腹はタプタプ。
喉の渇きはすっかり癒えたところで、あとは小池新道コースをひたすら下って行きます。
こちらのルートも足元に岩が多めですが、笠新道のような急登はほとんどなくて緩やかな傾斜が続く感じなので、歩きやすさは段違いです。
完全に樹林帯に入るシーンというのは少なく、眺めもそれなりに良い道ですが、反面日差しがずっと照り付けて後半は暑さとの戦いでした。
単調な道を下り続けて、秩父沢に到着。
小池新道コースの中盤にある貴重な水場で、多くの人が休憩してました。
数日前の大雨で一度この橋は流されてしまったのですが、少し上流のところに新たに橋が架けられていました。ありがとうございます。
この橋は大雨に弱いところがあるので、通行する場合は事前にチェックした方が良いかと思います。
この後もひたすら小池新道の緩やかな道を下山。
真横に川が流れるようになってくると登山口も近いです。
午前10時50分、小池新道登山口に到着。
あの上に見えている稜線から遥々下ってきました。
あとは新穂高までひたすら林道歩き。
これが1時間以上続くので結構しんどい。日差しも照り付けてとにかく暑かったです。
しばらく歩くとわさび平小屋に到着。
小屋前にはキンキンに冷えた野菜やフルーツが売られていたり、軽食も可能です。
テント場もあるのでここで前泊すれば双六岳や笠ヶ岳登山もだいぶ楽になります。
わさび平小屋から10分ほど歩けば、笠新道登山口に到着。
ここから急登を登ってヘロヘロになりながら笠ヶ岳までたどり着いたのが前日のこと。ちょうど笠新道を下山してきた人がいて、ぐったりと疲れている様子でしたが、その気持ちすごくわかるぞ。
登りも下りもつらい笠新道。
入口に水場があるので、挑む場合はここでしっかりと水を汲んでおきましょう。
その後も左俣林道をひたすら歩き続けて12時少し前に新穂高温泉に下山完了。
ちょうど高山行きのバスが出るところだったので(写真に映っているバス)、飛び乗るような形で乗車。
バスは高速バスタイプの座席で始発の新穂高ロープウェイではまぁまぁ空いていましたが、途中途中で観光客が乗ってくるので最終的には満席近くにまでなりました。
松本駅へ向かう場合は、途中の平湯温泉で下車してバスを乗り換えます。
次のバスまで2時間近くあったので、バスターミナルのすぐ隣にあるひらゆの森で日帰り温泉。露天風呂も広いのでおすすめです。
平湯温泉から松本行きのバスは今年から事前予約が必要になったのでお気を付けください。当日でも多少空きはありましたが、繁忙期は事前にネットから予約しておいた方が安心です。
平湯温泉から1時間以上バスに揺られて松本駅に到着。
ここから特急あずさに乗って東京へと帰りましたとさ。
1泊2日の山小屋泊で挑んだ、因縁の笠ヶ岳。
前回のテント泊に比べたら荷物軽め、距離も短めでだいぶハードルは下げましたが、今の自分にはこれくらいがちょうど良かったです。
急登の笠新道も無事に登り切れて、2日目に見たご来光からの稜線ハイクは最高の一言!
12年越しに良い思い出として上書きできた、北アルプス・笠ヶ岳登山でした。
おしまい。
【日程】
2025年8月18日
【コースタイム】
5:20 笠ヶ岳山荘
7:30 秩父平
8:40 弓折岳
9:20 鏡平山荘
10:20 秩父沢
11:00 わさび平小屋
11:55 新穂高温泉
北アルプスの笠ヶ岳に1泊2日の山小屋泊で登ってきました。
ルートは急登と言われている笠新道。これがもうかなり過酷で片道8時間近くもかかる長丁場。笠ヶ岳山荘に着いた時にはもうヘトヘトでした。
天気も1日目はガスが多めで展望もあまり望めなかったですが、杓子平から見た雄大なカール風景と夕食後に見た夕焼けの空が素晴らしかったです。
因縁の笠ヶ岳……。
あれは忘れもしない12年前の夏。まだアルプスなんて数えるほどしか登っていない中、テント装備を買いそろえてウキウキしながら挑んだのが双六岳~笠ヶ岳の縦走コースでした。
1日目は新穂高温泉から双六小屋まで。思いのほか早く着いたものだから、双六岳に加えて三俣蓮華岳まで首を突っ込んだわんぱく登山。それが仇となったのか、2日目に膝を痛めて笠ヶ岳の稜線で危うく遭難しかけたのは苦い思い出。調子に乗った自分に活を入れてくれたのが笠ヶ岳でした。
何とか登頂こそ果たしたものの、泣きながら撤退するように無様な姿で下ったのが笠新道。今回はそこを登ります。
スタートは新穂高温泉。
今回も毎日アルペン号を利用したのですが、山小屋とのセットプランというのがあったのでそれを初めて使ってみました。1000円くらいお得で、しかも山小屋(笠ヶ岳山荘)へ電話を入れずにWebで予約が完結するのが良かったです。
トイレも済ませて、朝の6時30分に登山開始。
新穂高からは左俣林道を1時間ほど歩いていきます。
ここは春先の雪崩(土砂崩れ)で通行止めになっていたのですが、爆速復旧で7月初旬から無事に通れるようになってました。有難いことです。
道はほとんど平坦なので、ここら辺は良い足慣らし。
単調な道を歩き続けて、こちらの標識があるところが笠新道の入り口になります。
双六岳に向かう場合は林道をさらに30分ほど進めば登山口。途中にはテント泊も可能なわさび平小屋もあります。
笠新道登山口には水場あり。今年は雨が全然降らずに、事前の情報では枯れている可能性もあると聞いてましたが、ドバドバと冷たい水が流れていました。
笠新道に挑む場合、この先一切水の補給ができないのでここでしっかり汲んでおきましょう。自分は2.5L持って登ることにしたのですが、山荘に着くころにはギリギリでした。
いや、本当にきつかった……。
水分補給を十分して、いざ登山開始。
出だしから登り坂ですが、序盤はまだ急登とまではいかないつづら折りの道。
ここら辺はまだ余裕です。
笠新道は無駄なアップダウンが一切なく、基本的にずっと登りが続く体力と気力勝負なコース。
展望も序盤は全くなくて、唯一の目印となるのがこの標高が記された標識です。
入口が標高1400m弱なので、すでに300mほど登った地点になります。まだ大丈夫。
進んで行くと足元に岩が増えてきます。
これが笠新道の厄介なポイントの1つで、この岩があるために歩幅が乱される。下りも下りで滑らないように注意しなきゃいけないのでスイスイ下れない。
12年前はここを足を痛めながら半泣きで下ったわけですが、道中の景色なんて全く覚えていない中で、この岩に苦しめられたのだけは鮮烈に覚えています。
途中には真新しい倒木もありました。
これは1週間ほど前の大雨で倒れたもので、下山してくる方にも途中に倒木あるから気を付けてと教えていただきました。
通過する分には問題なかったですが、こういう細かい障壁のジャブが結構効いてくる。
単調な道を登り続けること2時間。少しずつ景色が開けてきました。
山頂はまだまだ先ですが、あいにく雲がかかって先の状況が見えない。
ただこれが逆に良かったのかもしれないです。日差しがない中でこれだけ汗だくだったんだから、カンカン照りならどうなっていたことか……。
1日目はガスが多めでしたが、それでもたまに展望が覗いてくれて背後には穂高連峰の刺々しい岩稜が見えました。
尖っとるな~
その後もひたすら登りが続く道。
上に行くにつれて岩も大きくなってきて部分的にハシゴも設置されていたりします。
これだけ見ればなんてことない道ですが、ここまででだいぶ疲れてます。高低差もまだ1000m程度なのに、急登続きで精神的に参ってくる。さすが過酷と言われる笠新道。
12年前に大きなしっぺ返しを受けた笠ヶ岳。今回は前回のような無様な姿は見せずにいかにスマートに登るかがテーマです。
自分の中ではリベンジ戦とも言えるわけですが、普通リベンジするなら同じ道をたどるのがセオリーなんでしょうがそこは完全無視。前回はテント一式を背負った重装備も今回は山小屋泊。課金して軽量化実現よ。
コースも今回は双六岳はスキップして笠ヶ岳との一騎打ち。前回よりも荷物軽い&距離短いのイージーモード。これで満身創痍になるんだったら、自分にはもう笠ヶ岳は無理です。今日でお別れします。
そんな小賢しい戦略を立てての12年越しの笠ヶ岳。
前回は下山で使った笠新道を頑張って登ってやろうというのだけが唯一の大義名分です。
こうして登ること3時間。
笠新道の最大の見どころポイントともいえる場所に到着。
それがこちらの杓子平。標高約2500m地点に広がる雄大なカール地形を望める場所です。
到着時にガスっていたものの、休憩している間に一時青空が広がって山の稜線が見えました。
そして短い時間ではあったものの、笠ヶ岳の山頂もチラ見え。
肉眼ではその肩にある笠ヶ岳山荘も見ることができます。
肉体的な疲労はかなりのものですが、ゴールが見えただけで精神的にはだいぶ楽になる。
杓子平からは完全な高山帯になって、辺り一面にはチングルマの群生が広がっていました。
8月中旬のお盆明けともなければ花はもう残っておらず、すべてが穂の姿に。
夏の終わりを感じて少し寂しい気持ちにもなります。
一休みして登山再開。
ここから稜線まではまたひと登りあるので頑張ります。
目の前に広がるアルプスらしい雄大なカールが美しい。何となく木曽駒ヶ岳の千畳敷カールに似た雰囲気を感じます。
ここが稜線までの最後の急登ポイント。
目の前の岩場を右側から回り込むように進んで行きます。先ほど、笠ヶ岳の山頂が見えたものの、まだここから2時間くらいはかかる距離。
近いようで遠い摩訶不思議な北アルプス・笠ヶ岳。12年経ってもやっぱり強敵ですわ。
ここら辺は少し登っては休んでの繰り返し。なぜかわからないですが、この笠新道は力が吸い取られるように疲れていきます。
それでも振り返れば美しい景色で、序盤の急登とはかけ離れた穏やかな空間が広がっています。
この杓子平も12年前は下りるのに必死であまり記憶にないところ。
前回のブログを読み返してみたら、この辺りでライチョウと出会ってました。こういうとき、ブログとして記録に残しておいてよかったと思えます。
その雷鳥様について、今回はこの先の稜線でご登場いただくことになりました。
こうして12時過ぎにようやく笠新道を登り切り、稜線分岐に到着。
笠ヶ岳はガスって見えなくなってしまいましたが、これから歩く稜線はしっかりと捉えました。
ここから先も一部登りはありますが、これまでの道に比べたら楽なもんです。
その前に、まずは少しだけ反対側へと進んで抜戸岳に登頂。
笠新道の分岐から10分程度で来れる距離です。ここは前回スルーしたところなので、今回是非とも立ち寄っておきたかったところ。
何も見えやしませんでしたが、登頂記念に標識だけ納めておきます。
あとはひたすら笠ヶ岳目指して稜線を直進。
ガスも濃くなってきましたが、涼しくて歩く分にはちょうどいい。
そんな中で聞こえてきたのが、「ウポッ!ウポッ!」というあの重量感のある鳴き声。
声がした方を見ると、すぐ近くでライチョウが顔を出していました。
やぁ!という感じでまるで向こうから声かけてくれた感じ。例によってふくよかなお腹が可愛いですが、割とこの子はスタイリッシュな方だと思います。
先月の白馬岳で見たライチョウは見事なまでのわがままボディーだったなぁ。
ここら辺の稜線は平坦で非常に歩きやすいところです。
晴れていれば展望も最高で、その至福の稜線歩きは2日目に実現しました。
時折ガスが晴れると、先ほどまでいた杓子平を一望。
上から見ると広々としたカール地形がまた壮観な眺めです。
さらに進むと有名な抜戸岩に到着。
稜線の途中に構える岩の門で、ここの間を通って行きます。笠ヶ岳登山者を出迎える入場ゲートという感じ。
そしてついに笠ヶ岳山荘のキャンプ場に到着。
ここのテント場は山荘から少し下ったところにあって、ここから山荘までは5分ほどの登りです。
一応テント場にも水場はあるのですが、今年は少雨というのもあってすでに枯れていました。
岩に書かれた声援を受けてあと一息頑張ります。これはよく覚えていて、12年前にも確かにありました。懐かしい笠ヶ岳の記憶が蘇ります。
しかしすでにテントがいくつも張られてましたが、ここまでテントを担いで登ってくるとは本当に凄いわ。みんな膝は大丈夫かね。
こうして14時に笠ヶ岳山荘に到着。
登りだけで8時間近くかかりました。距離はそこまで長くはないはずなのに、高低差が半端ないからか。いつも以上に水分も消費して何とか無事にたどり着けました。
こちらが受付。
2025年の夏は異例の少雨で山小屋の水不足が問題となってますが、ここ笠ヶ岳山荘も例外ではなく宿泊者でも水は有料(500ml/200円)となっており、洗面所の水道も出ない状態になってました。
ペットボトル飲料は制限なく買えるということだったので、到着早々ポカリを2本購入。1本はその場でがぶ飲みよ。
宿泊手続きを済ませて中へ。初めて泊まる山小屋ですが、清潔感にあふれていてとても綺麗でした。
登山とは全然関係ないですが、受付用紙を書いていて思ったのが、最近恐ろしいまでに漢字が書けなくなっているな~と。特に予定コースを書くところとか。読めるのに書けない。字も下手になっている。困ったもんです。。。
泊まったのはこちらの2段式の大部屋。
12人部屋でしたが、この日は割と空いていて5人で使うことができました。
夕食の時間は16時20分。
1時間以上時間があったのと、少しだけ青空が戻ってきたので1日目に山頂まで登ってしまうことにしました。
小屋の目の前に山頂はありますが、多少登るので10分くらいはかかります。
こうして12年ぶりの笠ヶ岳に登頂。
展望は残念ながらほとんど望めませんでしたが、頭上は晴れて明るい日差しが届く山頂でした。
北アルプスの中ではやや外れたところある笠ヶ岳。登りの過酷さも相まってもしかしたら今後登りに来ることはないかもしれないので、この山頂標識はしっかりと目に焼き付けておきます。
夕方に近づくにつれて天気も回復傾向で、少しずつ青空が広がり始めた時間帯。
山頂でたたずんでいても暖かかったので、しばらくボーっとして過ごしてました。
山頂脇の祠でお参り。
明日は晴れますようにと。
小屋に戻って待望の夕食の時間。
メニューはハンバーグカレーでした。舌がお子様なので、変にこだわった食事よりもこういう方が好き。しかもカレーはおかわり自由!たらふく頂いて美味しゅうございました。
ちなみに毎日アルペン号のセット割引が2食付きのプランだったので、朝食は自由に出発できるように弁当にしてもらいました。
弁当は酢飯の混ぜご飯とおかず。この時期のご来光が5時過ぎで朝食も5時からだったので、翌朝は4時半に自炊場で弁当を食べて、小屋前でご来光を眺めての出発となりました。
夕日の時刻までしばらくあるので、夕食後は自室に戻って他のハイカーさんと雑談タイム。
笠ヶ岳山荘の嬉しいところが部屋にコンセントが用意されていて自由に充電して良いところ。
スマホのバッテリー残量って登山中に地味に気になるところなので、これは非常に有難かったです。
そうして18時半、小屋の外に出て見ると夕日を感じられるくらいに雲が取れてきてくれました。
予期せぬハート形のメルヘンな夕日。映えるじゃないか。
稜線の雲もだいぶ取れて、明日歩く至福の縦走路が姿を現してくれました。
何ともそそられる稜線。
実際、2日目の朝は素晴らしき稜線ハイクを堪能できました。
夕日とは反対の東側では、雲の合間から穂高連峰の岩山もお目見え。
あれは奥穂高岳かな?普段は長野側(東側)から穂高岳~槍ヶ岳を眺めることが多いので、西側からの眺めは少し不思議な感じがしました。
そして夕日が沈む時刻。
薄っすらとガスが漂うものの、陽が沈む情景はしっかり目にすることができて良かったです。
ほんのりと赤く染まる笠ヶ岳。
笠ヶ岳山荘の立地条件はかなり良くて、山頂に行かずとも小屋前から夕日と朝日を眺めることができます。
翌朝も笠ヶ岳山頂でご来光を迎えようかと考えてはみましたが、結局面倒になって小屋前から拝むことになりました。
雲が完全に引いたのは太陽が雲海の果てに沈んだ直後。
美しいまでの夕焼けがこの日の最大のご褒美となりました。
わかりづらいですが左奥の山影は白山です。
この時ばかりは山荘に泊まっている人がみんな出てきて、思い思いの場所で夕焼けの空を眺めてました。
こうして1日目が終了。
大変でしたが、無事に笠新道を登り切れて良かったです。色々と思うところがあった笠ヶ岳も、自分の中で気持ちを一区切りつけれた気がします。
登頂は果たしましたが、登山として面白かったのは2日目。そこには素晴らしきアルプスの絶景が待っていました。
2日目に続く……
【日程】
2025年8月17日
【コースタイム】
6:30 新穂高温泉
7:20 笠新道登山口
10:40 杓子平
12:20 抜戸岳
14:00 笠ヶ岳山荘
14:30 笠ヶ岳